皆さんは、あつ森こと「あつまれどうぶつの森」って知ってますよね?
全世界で1341万本も売れていて、日本人の40人にひとりは買っているみたいです。大ヒットの影響で、任天堂の株価もめちゃくちゃ上昇していて、投資家としても嬉しい限りです。
なぜ、ここまでのヒットとなったのでしょうか?
他のゲーム会社とは大きく異なる任天堂のマーケティング戦略と、ヒットの法則。5つの成功要因を紹介しておりますので、マーケティングに興味がある方は是非最後まで御覧いただければと思います。
それでは、いってみましょう!
〇あつ森とは?
「あつまれ どうぶつの森」、通称「あつ森」は任天堂のシュミレーションゲームです。
「どうぶつの森」シリーズのニンテンドースイッチ版で、2020年3月に発売されました。
主人公が無人島に移住してきたところから、ゲームは始まります。プレイヤーが言葉を話す「どうぶつ」と同じコミュニティ内で生活し、様々な交流をしながら、島を発展させながら、バーベキューに釣りや虫捕りなどのスローライフを満喫できます。また、どうぶつの住人や他のプレイヤーとの交流を楽しむこともできます。ゲーム内では、現実と同じ時間が流れており、四季折々の風景や暮らしを堪能できます。
ファミ通のゲーム販売本数ランキングによると、国内のあつ森の累計販売本数は約480万本と歴代1位!これは、2位の「大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL」の約372万本を大きく上回っています。
また、販売からたったの3日間で約188万本も販売!これはニンテンドースイッチの初週販売本数の歴代1位。それまでの『ポケットモンスター ソード・シールド』を超える記録でもありました。
〇あつ森の成功要因
あつ森シリーズは2001年に発売されており、ニンテンドースイッチのソフトで7作目となります。なぜ、この7作目が爆発的な人気となっているのでしょうか。
まず、ユーザーの分析をしてみました。
あつ森ユーザーの、男女比はほぼ均衡していたのですが、年代別では20代が50%と大多数を占めました。ここにヒントがありそうです。
あつ森公式サイトユーザー属性(男女比/年代)
対象:PCおよびスマホ
期間:2019年10月〜2020年3月
そして、新型コロナウイルスという時代背景と「あつ森」というゲームの特徴を分析。若年層が大半というユーザープロファイルから、ほぼ答えは出ました。
「あつ森」は「ゲームではなくコミュニケーションツール」として支持された、ということではないでしょうか。
新型コロナウイルスにより、今まで当たり前であった人とのコミュニケーションの場所が突如として切り離されてしまいました。職場や学校はもちろん、飲み会などの交流会が無くなってしまったのです。
そもそも、コミュニケーションは人が生きていくうえで欠かせません。そのため、フェイスブックやツイッター、LINEなどのコミュニケーションを必要とするアプリは爆発的にヒットしています。外出が自粛された時に、現実世界とつながることのできる「あつ森」はコミュニケーションの舞台において必要な要素がたくさんあったのです。オンラインでの花見やBBQもできますし、四季も感じることができます。
また、自粛期間での過ごし方として、あつ森に人が集まっている様子がテレビで放送されたり、著名人があつ森で遊んでいる様子をSNSで拡散したことで、若年層に一気に広がったのではないでしょうか。
これが、「あつ森」最大のヒット要因だと考えられます。
「操作が簡単で分かりやすい」というポケモンGOとの共通点をヒットの要因として挙げている人もいます。しかし、そもそもゲームを手に取ってもらう必要があることから、操作方法が最大の要因とは考えづらいでしょう。
もちろんゲームとしての特徴やデザインなど、様々な要因もありますので、他の考えられる要因についても分析していきます。
①タイミング
あつ森が販売されたのは2020年3月です。新型コロナウイルスが世界中に蔓延してしまった時期であり、世の中には自粛ムードになっていました。家で過ごすように呼びかけられ、通勤・通学時間には駅にも人が少なく、リモートワークが普及し始めた時期ですね。そんな自粛期間中に、巣ごもり需要が急拡大し、ゲーム業界には大きな追い風となりました。
そして、現実世界とゆるくつながることのできる「シュミレーションゲーム」は、「タイミング」と「ゲーム要素」が掛け合わさり、ヒットの大きな要因となったのではないでしょうか。
あつ森はゲーム内で様々な遊び方ができ、飽きずにプレイできるので、外出できないストレスの解消となったとも考えられます。
実際に自粛期間中、SNSなどを通してあつ森に関する情報発信をしているプレイヤーはいました。オリジナルの島を公開したり、お金を効率的に稼ぐ方法を発信しいたり、特に目的なく「あつ森」の実況プレイをしている人もいました。
きゃりーぱみゅぱみゅさんは花見を、指原莉乃さんはメンバー島に訪問したことをつぶやいていました。
・きゃりーぱみゅぱみゅさん
https://twitter.com/pamyurin/status/1244820034376978432
・指原莉乃さん
https://twitter.com/345__chan/status/1245646373707337735
SNSとの連携は、ヒットを加速させるための必須条件ですよね。
自粛期間中なので、普段よりSNSを使う人も増えますよね。これにより、人気が大きく押し上げられたことは、間違いなさそうです。
②コレクション要素
あつ森はゲーム内で使用できるアイテムが数多くあります。
例えば、島に落ちている木材や、浜辺に落ちている貝殻、そして釣りで手に入る魚など。現実世界の時間に合わせてプレイすることができるので、季節・時間・場所によって手に入るアイテムが異なります。魚であれば、早朝や夜にしか釣れない魚もいれば、池・川・海にしか棲んでいない魚もいます。
また地域によっても変わっており、例えば10月から北半球で出現する魚にはイエローパーチやカレイがあり、南半球ではメダカやザリガニが手に入ります。手に入るアイテムは魚以外にも、虫・植物・海の幸、そして石や木材などモノを作るための材料など。そのアイテムは売ることができ、ゲーム内で使える通貨「ベル」に替えられます。アイテムごとに値段も異なり、高価なものであればあるほど入手困難です。
例えばシーラカンスやデメニギスは高く売れますが、フナやアジは安く買い取られます。
また、手に入れたアイテムは売却せずに博物館に展示したり、自分の家や島においたりすることも可能です。
このように、あつ森では数多くのアイテムがあるので、コレクション要素を楽しめるのです。
③やりこみ要素
無人島が舞台の「あつ森」では、自分の好きなように島をつくり変えていけるやりこみ要素があります。
島の中に公園や温泉、喫茶店に遊園地まで造ることもできます。また、島の雰囲気を和風であったり、お化け屋敷風にしたりもできるのです。島を発展させるには、ゲーム内通貨「ベル」を貯めて工事をしたり、必要なアイテムをそろえたりする必要があります。そうすれば、木や岩などの撤去や床の塗装をしたり、橋や坂を作る工事をしたりして、自分だけの島をつくることができるのです。
また、他のあつ森プレイヤーとのやりとりを行うことができます。会話はもちろん、ゲーム画面のスクリーンショットを取ったり、SNSと紐づけたりして、自分のオリジナルの島を見せ合うことができます。
コミュニケーションが可能なゲームは人気で、モンスターハンターシリーズは「一狩りいこうぜ!」というキャッチコピーで有名です。仲間とゲームを攻略をする楽しみや、喜びを共有することができると、満足度は上がりますよね。
④ゲーム内通貨「ベル」
ゆるいゲームの「あつ森」ですが、ゲーム内通貨である「ベル」の存在がリアリティと難易度を左右しています。ゲーム内のアイテムをコレクションしたり、島を作り替えたりするために、ベルは必要不可欠です。
またゲームの序盤に、移住サポート役の「たぬきち」から、
「島に移住するときにかかった費用を、あとで返済してほしいんだなも」
と借金の返済を求められたり、ベルで住宅ローンを組んだりなど、お金のやり取りではリアリティを感じる画面があります。
これは余談ですが、たぬきちからの借金は、踏み倒すことが可能です。もしベルを返済しなくても、家や家具などの資産を差し押さえられたり、怖い動物が返済を迫ってきたりするようなことはありません(笑)
ただし、ベルを返済しないと家の増改築ができず、アイテムを置くスペースが取れないなどの問題が生じます。ベルを貯める方法もたくさんあるので、プレイヤーは様々なやり方でベルを稼げます。
例えば、集めた魚や虫などのアイテムを売却、特定のアイテムを高額で買い取ってもらえる「高額買い取りサービス」の利用、またはレアアイテムやベルをたくさん拾える「離島ツアー」に参加するなどの方法があります。
あとはカブの取引で大儲けするチャンスもあります。あつ森の世界にはカブというアイテムがあり、安く買って高く売ることで、たくさんのベルを稼げます。
ただし一週間すると腐ってしまって価値が無くなってしまうので、注意が必要です。
⑤緩い作風
冒頭でお話ししたように、あつ森は「スローライフを楽しめる」ゲームです。しかし一方で、明確な目標がないので「なにもしなくても良いゲーム」でもあります。
そして登場するほとんどが動物であり、マリオやポケモンなどの大ヒットゲームにはある敵キャラクターはいません。何かを攻撃したり、破壊したりといったゲームが人気を集める中、この内容は異質だといえます。
しかし、そのような「緩い作風」が、コミュニケーションツールとして成立し、人気となったのではないでしょうか。
誰かと競ったり、レベルをあげたりと頑張る必要はないのです。
暇なときになんとなく動物と交流したり、島で開かれる釣り大会や虫取り大会に参加したり、キノコ狩りやクリスマスなどの季節の行事に参加したりなど、様々な遊び方があります。
「あつ森」に出てくるのは、基本的に優しいキャラクターばかりです。誕生日のイベントもあり、島民の誰かが誕生日だと、毎朝行われる島内放送でだれが誕生日であるかがわかるうえ、その日に誕生日パーティが開かれます。
もちろんプレイヤー自身の誕生日も、祝ってもらえます。まだゲーム内で誕生日を祝ってもらったことのない人がいましたら、ぜひ誕生日にゲームをプレイしてみてください。
エンディング
いかがでしょうか?
ゲームではなく、コミュニケーションツールとして認識されたために大ヒットにつながったというのが筆者の分析です。
「あつ森」は、初めてゲームをするユーザーに優しいという「ポケモンGO」と同じ設計になっています。ゲーム初心者でもストレスなく遊べて、独特の緩さもゲームに興味がないユーザーの獲得にもつながったのではないでしょうか。
新型コロナというピンチに対して、任天堂が大切に育ててきた「どうぶつの森」の価値が、大きく脚光を浴びたといえますね。
それでは!